足摺 黒潮を望む森

2025年04月19日

四国の最南端 、太平洋に三方を囲まれる足摺半島。黒潮が近接して流れるため湿潤で温暖、年降水量は2500mm、年兵器気温は18度に達します。とくに冬季の温かさ(1月の平均気温約9度)が際立っており、沿岸部や低地では亜熱帯性の要素も交えつつ、山地には照葉樹林が広がっています。

この、日本を代表するとも言える足摺の森をめぐりました。


足摺岬

まずは四国最南端の海の景観。北海道から1.5日の移動を経て、昼に到着。

「椿のトンネル」と呼ばれる歩道を進みます。

主役のヤブツバキ。

樹高の低い、密な森です。

ウバメガシも海の最前線に。

山側を振り返った景色。彼方まで常緑樹林が続いています。

トベラ。

マサキ。

シャリンバイ、ヒメユズリハ。

オオバイボタ、ネズミモチ。

イヌビワ。

ナギ。

ビロウの自生地がありました。

内陸側の歩道へ。かつての遍路道なのだそう。徐々に樹高が大きくなりました。

タブノキ。

見事な大径木がありました。

シロダモ、ヤブニッケイ。

バリバリノキ。

スダジイ。大径木が点在していました。

ホルトノキ。

クロガネモチ。

サンゴジュ。

ハマヒサカキ、アリドオシ。

アセビ、ネジキ。

亜熱帯植物園に入りました。

深い森の雰囲気。ホルトノキの大径木。

サザンカ、ブンタン。

アオキ、クチナシ。

オオムラサキシキブ、ヤツデ。

シマサルナシ。

イヌガヤ、ソテツ。

岬から2時間弱で一周して戻りました。四国遍路の札所、金剛福寺。

その後、西に3kmほど移動して松尾集落。漁港に下る道沿い。廻り舞台となっている天満宮拝殿の裏手。

周囲長9m、高さ25mに達するアコウの大木。気根の集束。

この木は国の天然記念物に指定されています。 種子は鳥散布で他の樹木に着生します。

エノキ。

タブノキ、フウトウカズラ。


佐田山

次は山へ。海からの直線距離は1.5kmほどですが、標高400mほど。人為の影響があまり大きくない暖温帯性の常緑広葉樹林で、国有林の保護林に指定されています。

歩道に入って、最初は人工林の中。

炭焼き窯やイノシシ除けの囲いなど人工物も。

白皇神社の屋敷跡の看板。古くから人の利用があったようですが、神域の森は保全されたのでしょうか。

「大名竹」(トウチク)との説明。中国南部・台湾原産で、これも人為の跡。

ユキモチソウ。

歩道は天然林の中へ向かいます。

大径木が点在する森に入りました。

優占種はスダジイ。

アカガシも多くみられました。

タブノキ。

ホソバタブ。

バリバリノキ。

カゴノキ。

シロダモ。

イヌガシ、ヤブニッケイ。

イスノキ。

ヤマモガシ、ヤマビワ。

カナメモチ、ヤマモモ。

オガタマノキ、シキミ。

サカキ。

ヒサカキ。

ヤブツバキ。

サザンカ。

ハイノキ。

クロキ。

アセビ。

サンゴジュ、カクレミノ。

アリドオシ、フウトウカズラ。

ナギ。

アブラチャン。

ヤマザクラ。

イヌビワ、アカメガシワ。

ヤマアジサイ。

ミツバツツジ。

林床、部分的にスズタケ。

調査個体にIDがついていました。試験地の看板によると、シイの樹齢は140年を超えるとのこと。

残念ながらここでもナラ枯れが見られました。アカガシに被害が多いような印象。

山頂に向かう斜面は萌芽した二次林の林相。

巨石を超えると白皇山の頂上。標高458m。

東側の展望が開けて海が見えました。


弦場山

ここから車を走らせて1時間ほど、半島西部の大月町。海に面する椎ノ浦という集落。

ウバメガシの保護林があります。農作業の方に声掛けして裏山へ。

すぐに照葉樹林の中。

ウバメガシが優占していました。

根株から萌芽した樹形。かつて、薪炭利用のために繰り返し伐採が行われたことが伺えます。樹齢はわからないのですが、50年ほどでしょうか? 

この地域では、近年「土佐備長炭」として高品質な炭を生産・販売する取り組み組みが進められているとのこと。

気持ちよく、踏みあとをたどっていきます。

スダジイ。

ヤマビワ。

シロダモ、ヤマモモ。

林床で目立ったタイミンタチバナ。

ヤブツバキ。

ヒサカキ、コバンモチ。

ネズミモチ。

モチノキ、クロガネモチ。

イヌビワ、マルバウツギ。

ヒノキの人工林を通って、標高200mほどの尾根まで登りました。

直径70cm、樹高15mほどのウバメガシの大径木に出会うことができました。

下山しました。

海岸の斜面にもウバメガシが密生。

花が満開でした。

クロマツ。

ノグルミ、アカメガシワ、タラノキ。


大岐の浜

もう遅い時間なのですが、もう1か所。半島を東に戻って土佐清水の大岐海岸。海岸に向かう長さ200mほどの歩道。

樹高20mを超える常緑広葉樹林が広がっていました。

大岐浜林(おおきはまばやし)と呼ばれるこの海岸林は、もともと人工的に育成された歴史をもっています。江戸初期に防風・防砂のためにクロマツが植栽され「大岐の松原」と呼称されていました。伐採が制限された一方で、燃料・肥料のための枝葉の採取は広く行われてきたようです。

ところが戦時中の大径マツの伐採を経て、1950年代以降にはマツ枯れが進み、その後とく 補植等が行われなかった内陸側で、常緑広葉樹を主体とする二次林が発達したのだそうです。

クスノキ。直径100cmを超えるものも。海岸林としては例外的と言える発達具合です。

タブノキ。以下の常緑広葉樹種も含め、構成種の多くは鳥による種子散布によって定着したと考えられています。

シロダモ、バリバリノキ。

ヤブニッケイ。

ヤマビワ、ホルトノキ。

そしてこの森を特徴づけるもうひとつ。カカツガユ(クワ科ハリグワ属)。南日本の沿海部に生育する常緑ツル性木本。自生地が限られており、大きな看板もありました。この時期は地味ですが、黄色に熟すホオズキ(古名カガチ)のような果実が特徴だそう。

キヅタ。

カヤ。

ハゼノキ。

チュウゴクエノキ。

ヤマグワ、イヌビワ。

ヒメユズリハ、トベラ。

マサキ、ハマヒサカキ。海岸に近づくと次第に樹高が低くなっていきます。

浜林を振り返ったところ。

時刻は18時半。正味半日、海に臨む豊かな森たちでした。